地球外生命の探査に向けて:「地球は特別な惑星か?」成田憲保

 地球は特別な惑星か? 地球外生命に迫る系外惑星の科学 (ブルーバックス)

 太陽系外の恒星に惑星が存在することは、マイヨールとケローによって1995年に初めて発見され、今では数千個の惑星が発見されている。本書は、系外惑星についての第一線の研究者が、系外惑星の研究の現状とこれからの展望について、その全体像をわかりやすくまとめた好著である。

系外惑星の研究に革命を起こしたのは、2009年に打ち上げられたケプラー宇宙望遠鏡衛星による大規模な探査である。ケプラー衛星は、ある一定の範囲を集中的に精度よく長期間観測することを繰り返して、4000個以上の惑星候補を発見し、そのうち2000個以上が本物の惑星であるとわかった。さらに画期的なことは、公転周期が1年に近い地球サイズの惑星を多く発見できたことだ(本書の図3-5, p63)。この10年で系外惑星の探査は大幅に進歩したことになる。

本書で紹介されていた、NASAのExoplanet Data Archiveから最新のデータを持ってきて、現在確認されているすべての系外惑星について、地球からの距離と、惑星サイズの関係をプロットしてみた(下図)。

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地球から一番近いプロキシマ・ケンタウリが、地球から1.3パーセク(4.2光年)であることを考えると、地球に近い惑星の観測はこれからの課題であることがわかる。それでも地球サイズの(おそらく)岩石惑星がこれほど多く観測されているのは、とても興味深い。ただ、本書の図6-7(p158)で示されているように、質量と公転周期でプロットしてみると、地球タイプの惑星の観測はまだまだ少ないことが実感される。

地球に近い系外惑星の観測が少ないのは、地球に近い恒星は多くが暗い赤色矮星であり、観測が難しいためである。本書では、これからの系外惑星のひとつのターゲットとして、地球に近い赤色矮星の惑星探査がとりあげられている。赤色矮星の惑星は、ハビタブルゾーン(液体の水が存在可能)にあるものも多く、地球外生命の探査という点で注目される。

地球外生命の探査のためには、系外惑星の大気組成の観測が不可欠である。本書では大気組成を観測するための計画が紹介されている。2020年代から30年代にかけて予定されているこうした観測が実現すれば、(地球型)生命の存在に関係が深い、酸素大気や、海をもった系外惑星が発見されることが期待できる。

 これからの20年で、私たちが生きている地球のような惑星が宇宙で特別な存在なのかどうか、そして(地球型)生命が特別な存在なのかどうかが、解明されるかもしれないと思うと楽しくなってくる。