「飯田のミクロ」で「流動性の罠」論文のさわりを理解する:「クルーグマン教授の経済入門」

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)

クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)

最近発足した第二次安倍政権は、主要な経済政策として明確にリフレーション政策を標榜しており、今後のその成否が非常に注目されるところである。日本銀行はこの政権の発足に対応し、インフレ目標を2%とする政府との共同声明を発表した。これをきっかけに久しぶりに、ポール・クルーグマンインフレ目標政策を日本のデフレ対策として提案した最初の論文「日本がはまった罠」が収録されている「クルーグマン教授の経済入門」を手にとってみた。本書の初版は日本で1998年に出版されているので、もうかれこれ15年ほど前のことになる。

この論文の冒頭で、名目金利iと価格Pの関係を表す曲線1+i=(1/D)(C*/C)/(P*/P)を導出しているが、経済学初心者にはわかりにくい。ただ、「飯田のミクロ」を読んだ後に改めて眺めてみると、どうやら、当期の消費Cと次期の消費予想C*という、異時点間の選択に関する効用関数を最適化する(マクロな)行動の結果として、そのような曲線が得られるようだ。「飯田のミクロ」では、経済学の標準的な議論は、制約条件付きの最適化であると説明している。クルーグマンもまったく同じことをやっているようだ。この場合、効用関数UはU=ln(C)+D ln(C*)である(0