- 作者: グレッグイーガン,山岸真
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/06/24
- メディア: 文庫
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本作ではイランが舞台になっていて、後半の2027年に至る前の、2012年に起こるとしているイランの架空の民主化運動に相当ページ数が割かれているし、「サイドローディング」を実現するイラン人科学者ナシムの研究の様子や心情も細やかに描かれていて、テーマの描き方としてはやや散漫である。ただ、そうした細部も個人的には興味深く読めた。2027年にはPLOS Biologyに加えてPLOS Numerical Biologyというジャーナルもあるのだな、とか、ナシムがジャーナル論文を読むときの感じ方とか、ナシムの四十歳を迎えての科学者キャリアに対しての心境とか(それでも研究できていればいいじゃないか、と言いたくなる)、妙に心に響いてくる。「ディアスポラ」みたいに完全に「アップローディング」の先の先まで行っちゃうようなのも良いが、中途半端だけれどリアルな感じのする本作も良い。自分にとってグレッグ・イーガンは、翻訳が出たらすぐに読みたくなる貴重なSF作家のひとりである。