- 作者: フィリップマティザック,Philip Matyszak,安原和見
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/06/08
- メディア: 文庫
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地中海各地からローマを訪問するために、もっとも高速かつ効率的な輸送手段は船である。当時、ローマと並ぶ大都市であったエジプトのアレクサンドリアからローマの外港プテオリまで10日弱の船旅である。現代の航空機には及ぶべくもないが、1600kmを10日弱ならそれほど悪くない感じだ。アレクサンドリアとプテオリの間は、100-200人の旅客と350トンの穀物を運ぶ大型船が運航していたそうなので、想像以上に当時の地中海は、人とモノの行き来が頻繁であったに違いない。
豊富な図版から、当時のローマの様子を手にとるように理解することができる。大街道、上下水道、闘技場、競技場、神殿、浴場、集合住宅など、モダンにさえ見える感じで現代とあまり違わない建築物であるのがたいへん印象的だ。2000年近くも前なのに100万都市であったのだ。首都ローマに富を集中させるための軍事と造作の結果である。一方で、現代と決定的に異なるのが医療であり、当時は抗生物質も予防接種もなかったので、いったん病気になったり怪我をしたりすると死に至る確率がものすごく高い。
本物の旅行ガイドなので、「役に立つ」ラテン語会話集も付録に付けられていて楽しい。「家庭の平和」の項目で、「思い出せない」は、’Non possum reminisci’ だそうである。確かに役立ちそうだ。