武士の起源を解きあかす――混血する古代、創発される中世 (ちくま新書)
- 作者: 桃崎有一郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/11/06
- メディア: 新書
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本書を一読して強く印象づけられるのが、7世紀に登場した律令国家日本の体制が、何と矛盾に満ちたものであったかということだ。国民一人一人を把握して戸籍を作り、一人一人に課税し、税を都まで納めさせるというのは、現代の日本であればいざ知らず、この時代では到底無理である。このようなわけで、税はなかなか集まらないうえに、軍事(東北遠征)と造作(新都造営)に励むとなれば、体制が破綻してしまうのは当たり前である。
本書によれば、武士はまさに古代律令国家の破綻の中から生まれた存在である。したがって最初の武士たちは古代からのつながりを濃厚に残しており、本書ではそのあたりが詳しく書かれていて興味深い。武士の存在を認識した国家は、彼らを正式に「武士」と名づけ国制に組み込むことになる。こうして生まれた武士たちは、夷荻を討伐し王権を守護する役割を担って、次の時代の主役(のひとり)となっていくのである。