英語を学ぶ意義: 「実践 日本人の英語」 マーク・ピーターセン

実践 日本人の英語 (岩波新書)

実践 日本人の英語 (岩波新書)

「日本人の英語」シリーズの最新版がいつの間にか出ていたようだ。最初の「日本人の英語」が出たのが1988年だから、
このシリーズはもう四半世紀にわたって愛読され続けていることになる。本書は、著者の長年の日本滞在経験を生かして、日本人にありがちな英語のおかしな用法についてきわめて実践的に解説しており、とても参考になる。

おかしな用法のうち、「入る」<−> ’enter’、「~だけ」<−> ‘only’、「十分に」<−> ’enough’、「ほとんど」<−> ‘almost’、「~の」<−> ‘of’など、ある英単語をひとつ覚えのようにして適切でない意味で使い続ける事例については、たんに不勉強なので、勉強して怠けずに辞書を引き、ひたすら語彙を増やしていくしかないように思う。

ただ、’my friend’が英語圏人にとってもつ語感や、冠詞と数に対する英語の基本的論理は、これらがそもそも日本語にはないものなので、新鮮に感じられる。これくらい丁寧に説明されないと、少なくとも自分には理解できないし、冠詞については未だに混乱していて自分が完全に会得できたとも思えない。因果関係の強さに応じた接続詞の使い分けも、本書で初めて知ったことだった。特に、‘and’は意外に汎用性が高い、ということがわかって得をした気分だ。「大人の」英語表現と、「子どもっぽい」英語表現の違いについても、丁寧に解説があって為になる。

本書は、英語を学ぶことが、まさに異文化を学ぶことなのだと体感させてくれる良書である。英語圏人としての著者が日々日本語圏内で活動し、日本語を異文化として意識しているからこそ、説得力をもった内容になっているのだろう。英語は論理的な言語であり、日本語はそうではない、というありがちな感じで説明していないところも好感がもてる。