- 作者: 米山明日香
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2014/10/02
- メディア: 新書
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本書ではそのほか、イギリスのサッチャー元首相、南アフリカのマンデラ元大統領、アウンサンスーチー、キング牧師、スティーブ・ジョブズの演説をとりあげ、原文と翻訳の両方を示して解説している。特に、それぞれの演説の中で名台詞となるところを丁寧に解説し、英語による演説(スピーチ)の極意を伝授してくれるところが良い。ただ一点、ゲティスバーグ演説の「人民の、人民による、人民のための政治」の解説は少しわかりにくくて、私は加藤陽子氏が言うように、わが日本国憲法による解説のほうがわかりやすく感じる。つまり、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」というわけだ。
本書を読むと、政治家の演説に興味が出てくる。例えば、最近、安倍晋三首相がアメリカの議会で行った演説はとても興味深い。この演説は、第二次世界大戦の死者(とくにアメリカの死者)を追悼することが大きなテーマになっていて、その意味でゲティスバーグ演説をふまえている形になっている。そして、日本とアメリカの同盟が大切にしている理念は、'the rule of law, respect for human rights and freedom’であると言い切っている。他ならぬ安倍首相がアメリカの議会でこのように約束し、議会で強く支持されたことの意義は大きいと思う。