若い人々の活躍を描いた前二作とはうって変わり、衰えと引退を意識した初老男たちの話になったので、がぜんと興味が出てきた。
年寄りになったら、金と権力はさっさと若い人に譲り渡して、
「好きなラーメンを好きに作りたいだけの、イカれたラーメン馬鹿だっ!!」(1集、p132)
と、いちラーメン職人に戻る展開がいい。どうせ老害なんだから、この方向に行くのが一番あこがれる。老いても評論家になるのでなく、若い人たちにかける迷惑を少なくしつつ「作る人間」であり続けられるかどうか、それが大事なことだ。
いちラーメン職人に戻ったら、新たな目標を目指して彷徨を続けるのがまたいい。それをやり続けていると、
「もう俺のラーメンの中に、俺はいないんだよ。」(4集、p44)
ということになるのだ。何者かになろうとすることから解放され、自由になる。それは、目の前にいる誰かが喜ぶことをするという意味では自由ではない。でも年をとったらそれでいいと思う。
さてこの物語は、老いたあとに来る死を描くことはあるのだろうか。